研究概要 |
1. 独自に確立した2種の痒みモデル,すなわち健常皮膚での脱顆粒惹起剤で誘導する一過性の痒みモデルとアトビー性皮膚炎モデルマフスの患部への引掻き動作回数を指標としたアレルギー病態での慢性痒みモデルを駆使し,痒みの機序を検討し,一般に知られているヒスタミン以外に,PAF,セロトニン(5HT),一酸化窒素(NO),アセチルコリン(Ach),オピオイド及びプロテアーゼも起痒反応に関与する事を明らかにした.さらに,アトピー性皮膚炎モデルでの難治性の激しい痒みが末梢だけでなく,中枢でも制御されている事を示し,抗ヒスタミン薬不応答性の痒みの治療薬開発への手掛かりを示唆した. 2. 起痒関連物質として明らかにしたPAF,5HT,Ach(血管内皮からのNO誘導剤)及びプロテアーゼの投与により惹起する痒みに対するマウスの引掻き動作回数を検討した.その結果,いずれも有意な掻動作回数の増加を誘導し,特にPAF,5HT,プロテアーゼはヒスタミンよりも顕著な起痒作用を示した.そこで,各種条件を検討し,PAF,5HT,Ach,プロテアーゼで各々惹起する痒みを指標とするin vivoアッセイ法4種を順次,確立した.また,各法により既存の医薬品の評価を行い,本アッセイ法が抗ヒスタミンや脱顆粒抑制作用以外の新しい作用機序を有する止痒薬開発の為に有用であることを示した. 3. 各種アッセイ法を用いて,天然資源由来の止痒活性物質の探索を行い,活性成分の単離及び構造解析を行った.すでに探索した活性物質については,細胞レベルを含む作用機序の詳細な検討と共に,各種アレルギー反応への抑制作用や中枢抑制作用の検討等も行い,本活性物質が難治性の痒みを伴うアレルギー疾患の新しい治療薬及びリード化合物として利用できる可能性を示した.
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