1:これまでに膜融合リポソームの特性が消化管粘膜でも活かされていることを、負に荷電したリポソームを用いて明らかにした。そこで今年度は、消化管粘膜との融合における膜融合リポソームの荷電の影響について検討した。実験方法としてこれまでと同様にin situ loop法を用いて行った結果、通常リポソームは回収率が正電荷を帯びることによって負電荷に比べ低下したが、膜融合リポソームは電荷を変えても回収率に大きな変化が認めらなかったことから融合能に対する荷電による影響は少ないと考えられた。2:膜融合リポソームが消化管粘膜上皮細胞のシアル酸を認識することによって、細胞表面に吸着することをすでに明らかにしている。そこで次に、吸着の過程の後にリポソーム内封高分子物質がどのような挙動を示すのかを明らかにする目的として1)膜融合により細胞内に移行した内封高分子物質の定量、2)細胞を透過して血管から全身に運搬された内封高分子物質の定量の二点について検討した。1)として、プラスミド封入膜融合リポソームを用いた実験や共焦点レーザー顕微鏡を用いた実験等を行っているが、現在検討中である。2)として、過剰の膜融合リポソームを消化管に投与した後、採血を行い血漿中濃度を測定した。その結果、血漿中から内封高分子物質は検出されなかったことから、膜融合リポソームによる物質導入は粘膜上皮細胞のみで行われる可能性が示唆された。以上のことから、これまで培養細胞においてその特異性が明らかにされてきた膜融合リポソームは、その性質が失われることなく消化管においても優れたキャリアーとなりうること、さらに、その内封高分子物質が血中へ移行しないことから局所的な効果が期待できることが明らかになった。今後、これらの基礎的検討をふまえて、消化管内で安定なリポソームの調製、及びin vivo評価系の確立などを行っていく予定である。
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