研究概要 |
肺癌患者に対してカルボプラチン単剤による化学療法を行ない、AUCを主体としたカルボプラチンの薬理態と血液中のTPOの動態について検討した。 適格な臓器能を有し、文書による同意の得られたIV期非小細胞肺癌未治療患者12例を対象とした。性別男性8例、女性4例で、平均年齢は65.5歳、組織型は腺癌8例、扁平上皮癌4例であった。カルボプラチン与量はCalvert法にて算出し、目標AUCは7mg/ml×minuteに設定した。 プラチナ濃度測定は原子吸光法を用い、TPO濃度測定は、サンドイッチ酵素抗体法を用いて測定した。 血清中TPO濃度は、カルボプラチン投与後4日目以降に急激に上昇し、15日目頃に最高値に達した。一方血小板数は10日目以降に急激に減少し、19日目頃に最低値に至った。TPO濃度と血小板数には負の相関関が認められた。TPOの最大増加率(TPOmax/TPOday1)と正の相関関係が認められた(r=0.74,p=0.014)。血小板減症がまだ明らかでないカルボプラチン投与後8日目におけるTPOの増加率(TPOday8/TPOday1)もその後の血板最低値と有意な負の相関を認めた(r=-0.84,p=0.005)。 本研究の結果から、カルボプラチンのAUCが近似していても、血小板最低値には個人差が認められ、更に、ルボプラチン投与後早期でのTPOの増加率がその後の血小板最低値を反映することが明らかとなった。血小減少症の程度はカルボプラチンのAUCのみならず、巨核球系細胞が受ける傷害の程度、すなわち、骨髄感受の個人差も関与しているものと推測された。抗癌剤投与前後でのTPO濃度をモニタリングすることで、そのの血小板減少症の程度を予測し、TPOの予防投与の必要性や至適投与時期を決定する手段になり得る可能性あると考えた。
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