[目的] 健常小児で蛍光抗体法による抗核抗体高値例が見出された。既知の抗原抗体系とは異なるため、検討を加えた。 [結果] 健常小児の血清多数例についてHEp-2細胞を用いた間接蛍光抗体法により抗核抗体の有無をスクリーニングし、予想以上にその陽性率が高いことおよび基準値を引き上げる必要性があることを見出した。この中には、かなりの高力価陽性者(640倍以上)が含まれていたが、それらにおいて既知の疾患標識抗体は陰性であった。これらの小児検体についてその対応抗原を同定するためimmunoblottingを施行したところ、50kDに陽性バンドを示すもの、あるいは75kDに陽性バンドを示すもの等があり、それらのheterogenousな性質が判明したためこれを報告した(アジア臨床病理学会、1998)。 また各種疾患患者において出現する既知の疾患標識抗体の対応抗原についてHEp-2細胞抽出液を抗原として用いたimmunoblotting法により検討した。U1-RNPにおいては65kDおよび27kDの位置にバンドが確認され、以下、Smでは27kD、SS-Aでは36kD、SS-Bでは50kD、Scl-70では70kDの位置にバンドが確認され、報告予定である(国際電気泳動学会、1999)。 小児において特徴的に多く見出されたのはSLEに特異的とされる抗PCNA抗体に類似のパターン(PCNA-like)を示すものであり、これについて検討を進めた。このパターンは細胞周期依存性に発現される抗原に対する抗体と考えられた。この抗体は種々の疾患患者に見られ、疾患特異性は低いことが判明した。これらについてimmunoblottingを施行したところ、多くの例で80kDと60kDの位置にバンドが見られ、かなりhomogenousな性質が見出された。これらについて、初期の予定ではhuman cDNA libraryを用いて抗原同定まで施行する予定であったが、現在、進行中であり、引き続き検討を進め、当初の目標まで到達する予定である。
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