虚血性心疾患患者の行動パターンおよび行動パターンの変化が、患者のクオリティ・オブ・ライフ(以下QOLとする)とどのように関係しているかについて検討した。対象は金沢大学医学部附属病院第2内科循環器外来に定期的に通院している虚血性心疾患患者62名とした。対象の条件は、診断の定義に該当し、急性期を脱して半年以上経過しており、調査時に社会復帰している者で、研究についての説明は外来主治医の協力を得た研究に対する同意が得られた者とした。方法は発症前と現在の対象のタイプAを知るために、前田の作成した「A型傾向判別表」(30点満点)を使用し、合計得点17点以上をタイプA、16点以下をタイプBと判定し、発症前後での行動パターンの変化を見た。また患者のQOLを測定するために「病気をもちながらの生活管理」の質問紙(以下「病」の質問紙とする)の再検討された項目のものを使用し、総得点によってQOLの程度を評価した。その結果、1.行動パターンを変容することによる総得点からみたQOLの変化はみられなかった。2.発症前にタイプAであり現在タイプBに行動修正した者(A-B群)と発症前も現在もタイプAのままの者(A-A群)の間で「病」の質問紙の平均得点に有意差を認めた1項目の内容は「社会的な地位や置かれている立場を考えると、多少無理をしても、仕事(あるいは家事等)はおろそかにできない」でありA-B群の得点の方が高かった。3.有意差を認めることはなかったものの、A-B群がA-A群よりも「病」の質問紙において高得点を示す項目が多かった。したがってタイプAを修正することでQOLを低下させることはなく、むしろタイプAのままでいることの方がQOL上望ましいことではないといえた。今後は、行動修正についての患者の理解内容や考え方、意欲についても検討していきたい。
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