研究概要 |
1. 面接調査の実施 本調査は,(1)療養者や家族の意思表示や自己決定を支援するための訪問看護婦の方略と,(2)訪問看護場面におけるインフォームド・コンセントの実態を明らかにすることを目的に実施した。対象は東京都および神奈川県内の6カ所の訪問看護ステーションに勤務する28名の訪問看護婦であった。調査の同意が得られた訪問看護婦に対し,半構成的な面接法によりインタビューガイドを用いながら実施した。1回の面接時間は30分〜90分であった。 2. 結果・考察 (1) 対象者の概要:対象者の平均年齢は35.4歳(26〜51歳)であった。看護婦の経験年数の平均は11年1カ月であり,また訪問看護婦としての経験年数の平均は2年10カ月であった。 (2) 療養者や家族の自己決定を支援するための訪問看護婦の関わりに視点を当てて分析した結果,(1)療養者と家族,または家族間で意思が異なった場面とその際の訪問看護婦の対応および心理状況の特徴,(2)療養者や家族の自己決定後の“ゆらぎ"と“ゆらぎ"がみられた場合の訪問看護婦の対応および心理状況の特徴が明らかになった。(分析結果の詳細は省略する。) (3) 療養者・家族へのインフォームド・コンセントの実施状況とそれに対する訪問看護婦の思いを分析した結果,訪問看護婦は病棟の臨床看護婦から訪問看護婦への申し送りや,療養者・家族への退院指導が不十分なためと思われるトラブルが多いと感じていることがわかった。また医師の説明不足による療養者や家族の誤った理解が原因でトラブルが生じる傾向が強いこともわかった。医療処理や看護ケアに限らず,ターミナル期にある療養者の予後に関する説明を行う際に訪問看護婦が心がけていることとして,(1)説明の時期やタイミングの見極め,(2)療養者や家族が希望しているかの確認,(3)療養者や家族が納得しているかの確認を特に重視していることが明らかとなった。
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