研究概要 |
痴呆性老人の摂食困難要因を分析し,それをもとにアセスメントツールを作成することを目的に研究を行った。平成10年度は,平成9年度に作成した痴呆性老人の摂食困難アセスメント表(第1案)を用いてプレテストを実施し,研究協力者である臨床看護婦2名との討論及びスーパーバイザーによるアドバイスを踏まえ,本アセスメント表に改良を加えた。その上で,痴呆性老人8名(中等度痴呆2名,高度痴呆4名,最高度痴呆2名)に本アセスメント表を適用し,妥当性について検討した結果,以下の知見を得た。 1. 痴呆性老人の摂食困難アセスメント表は,「摂食困難内容」とそれを増強させる要因である「基本属性」「痴呆修飾要因(食環境,姿勢など)」「身体的要因」「援助要因」によって構成された。 2. 「摂食困難内容」として最終的には36項目が抽出され,このうち24項目(66.7%)はLeopoldら(1983)の摂食・嚥下過程5段階分類でいう先行期に認められた。また,この24項目の摂食困難内容は,特に「痴呆修飾要因」である食環境や姿勢と深く関連していることが,介入前後の比較分析の結果より明らかになった。 3. 痴呆の重症度別の摂食困難の特徴として,中等度にはなく高度及び最高度に共通した内容として「摂食を自ら開始できない」が,最高度にはなく中等度及び高度に共通した内容として「器を並べ替える」が,最高度のみに認められたものとして「むせ」「口中に食物をためたまま嚥下しない」が挙げられた。さらに最高度痴呆では,最適な介入を試みても中等度に比して自動的な摂食を持続できないなどの特徴が見られた。 4. 本アセスメント表を用いて見い出された介入を実施した結果,全対象者に自動的な摂食の回復を認めたことから,本アセスメント表の妥当性が検証された。しかしながら,アセスメント項目が多いことなど臨床における実用性という点において更なる改善を要する。
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