個人レベルでの快適な環境設計のためには、衣服の着用快適感を客観的に評価する手法が必要である。そこで、特に"蒸れる、べたつく"といった夏の暑い環境下や運動時に発生する衣服着用時の温度と湿度に関する不快感評価法確立のための前段階として、衣服素材の物性値を用いてヒトの平均皮膚温を評価・推測できるような計算式を考案した。 30℃・70%RHの暑熱環境下で、諸物性値のほぼ等しい衣服素材から成るスポーツシャツ7種類を着用させて、トレッドミルによる走行運動を行い、安静時、運動時の熱・水分移動特性と着用感を評価した。その結果、安静時のような発汗のない蒸れ始める前の段階では、衣服内湿度は肌側に吸湿性繊維を着用した場合に低く、快適感は吸湿性によって左右されると推測できたが、発汗が生じるような暑熱環境での運動時には、快適性を左右する因子は吸湿性だけではなく、衣服素材の肌離れの容易さが重要な因子であることが明らかになった。この肌離れのしやすさは、衣服素材のドレープ性の指標である振動減衰率で表すことができ、この振動減衰率は暑熱環境運動時の平均皮膚温と直線関係にあり、衣服素材にドレープ性をもたせることによって、効果的な発汗と蒸発を促し、運動中の平均皮膚温を制御できることがわかった。
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