研究概要 |
本研究は,達成目標理論の視点から子どもの学習意欲を高めるために,どのような体育の授業構造を構築していけばよいかを実証的に研究する。そのため,実際の体育授業単元を研究対象に,体育の授業構造を測定するための組織的観察法,及び子どもによる形成的授業評価法を援用して,以下の問題を検討する。 1) 児童個人の進歩を強調する個人内評価基準による教師の評価フィードバックは,授業の課題志向の雰囲気知覚及び子どもの課題志向性を強め,学習意欲(満足感,愛好度)を高めることができるか。 2) 特に体育を苦手と知覚している子どもにはそれは有効であるか。 平成9年度においては,国内外の関連文献を収集して研究成果を展望すると同時に,研究方法について検討した。体育の授業構造の測定は,ビデオカメラによって,教師の授業中の教師行動及び発話を録画する。またポータブルミニディスクレコーダーを携帯させ授業中の教師の発話を録音する。データは組織的観察法によって解析し,また教師の発話については評価内容・基準を判定する分析カテゴリーを加えた。子どもの学習行動及び学習意欲の測定として,(a)体育授業における目標志向性尺度,(b)能力知覚尺度,(c)体育授業の雰囲気知覚尺度,及び(d)体育授業の教師の評価言葉に対する子どもの反応尺度を作成した。また(e)体育授業の態度評価(診断的評価及び総括的評価),(f)体育授業に対する満足度・愛好度尺度,及び(g)体育授業の形成的評価尺度を使用することにした。 平成10年度においては,群馬県内の3小学校の6年生(各1クラス)で1学期に実施される体育授業(各15〜21授業)を対象に,(a)から(f)は,5月上旬と7月上旬に測定を実施し,(g)については授業毎に授業終了直後に実施した。分析の結果,1)は支持され,2)についてもその有効性が示唆された。
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