本研究においては、顕在及び潜在学習条件で文脈干渉効果が発現するかについて検討することを目的に2つの実験を行った。まず、実験1においては、被験者32名を顕在学習群と潜在学習群に分け、コンピュータ・ディスプレイ上を左から右にランダムな上下運動を行いながら移動するターゲットをカーソルによって追跡するというトラッキング課題を行わせた。ディスプレイは左からセグメントA、B、Cの3区域に分類されており、セグメントBにおいては、ターゲットは2通りのパターンのみで移動し、顕在学習群のみがそれに関する教示を受けた。また、各群の被験者の半数はセグメントBに同一のパターンが30試行連続呈示されてから、もう1つのパターンが30試行連続呈示されるというブロック条件で行い、残りの半数はセグメントBに2つのパターンが交互に合計60試行に渡って呈示されるというシリアル条件で習得を行った。10分間の保持期間の後、保持テスト、アンケートへの回答、再認テストを行った。実験結果は、セグメントBのエラーが他のランダムなセグメントのエラーに比較して、顕在、潜在に関わらず習得と保持において有意に少ないことを示した。アンケートと再認テストの結果は潜在学習群の全ての被験者がセグメントBのパターンに気付かなかったことを示した。また、顕在、潜在の両群において、ブロック条件とシリアル条件に有意な差が認められなかった。しかし、顕在学習群においては、文脈干渉効果発現の傾向が見られた為、実験2において保持期間を1日に伸ばし、実験1と同様の実験を行った。実験2の結果も実験1の結果と同様に、潜在学習の発現は認められたが、顕在と潜在の両群において、文脈干渉効果の発現は認められなかった。これは潜在条件を作るために必要なランダムなセグメントが、プロック条件の文脈干渉のレベルを引き上げた為と考えられる。
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