研究概要 |
本研究は、スポーツ消費者とスポーツサービス経営体とのサービス・エンカウンター(Czepiel et al.,1985;Zeithaml and Bitner,1996;Lovelock,1996)の動態分析によって、スポーツ経営学の領野におけるサービス・マーケティング研究の重要性について示唆することを究極的な目的としている。そこで本年度は、昨年度の研究によってフローチャートとして構造化された15のスポーツサービス・エンカウンター((1)施設に到着→(2)施設入口から駐車場→(3)駐車場に到着→(4)エントランスホールヘ移動→(5)エントランスホールヘ到着→(6)自動券売機で利用券の購入→(7)ゲート通過時→(8)ロッカールームへ移動→(9)ロッカールーム→(10)施設サービスの利用<トレーニング室、浴室・サウナ、トイレ・化粧室>→(11)精算機・ゲート退出時→(12)スポーツ情報コーナー→(13)ラウンジ・レストラン→(14)エントランスホールの退出→(15)駐車場の退出)の各接触点における「不満な出来事」が、トータルなスポーツサービスのクオリティや顧客満足及び施設ロイヤルティ等のマーケティング評価にどのような影響を及ぼすのかについて明確にすることを目的とした。 そのため、福岡県立Aスポーツ施設のトレーニング室利用者(N=341)を対象に調査を実施した結果、「トレーニング室」(27.0%)、「ロッカールーム」(21.9%)、「浴室・サウナ」(14.6%)といった3つのエンカウンターにおける失敗が前述した3つのマーケティング評価に有意な影響を及ぼすということが明確にされた。換言すれば、このことは、「サービス・デリバリー・システム全体の中で最も低いサービス水準が、顧客のトータル・クオリティを決定してしまう」という「最小律の法則」(田内・浅井,1994)が成立するということを示唆している。したがって、これからのスポーツ経営学の領野においては、スポーツサービスのマーケティング・マネジメント学(理論と実践)が発展し、必要視されていかなければならない。
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