研究概要 |
本研究は、メタ分析(Meta-Analysis)という複数の研究結果から一般的結論を導き出すための統計手法を用いて、スポーツ選手と競技意欲の一般的特徴を明らかにすることを目的とした。具体的には、1)メタ分析の理論、方法、欧米での研究成果の概要を明らかにすること、2)競技意欲に関してTSMI(体協競技意欲検査)質問紙を用いた研究を対象として、競技意欲と競技レベル、性との関係について検討することである。メタ分析の考案者であるGlass(1977)やCooper(1979)等の文献を手がかりに、メタ分析の理論と方法、メタ分析のアウトライン((1)問題の明確化,(2)文献収集,(3)研究の特徴を考慮したコーディング,(4)Effect Size(ES)の算出,(5)バイアスと要因の重み付けの修正,(6)統計分析)について考察を加えた。また、欧米のスポーツ科学領域でのメタ分析研究のレビューを行い、どのようなことが示されているか明らかにした。 競技意欲に関する文献収集の結果、TSMIを用いた研究は92編あり、平均、標準偏差、対照群などの記述のない論文を削除して24編をメタ分析の対象論文とした。総対象者数は6598名であった。結果の要約は以下の通りである。 1) 競技意欲の競技レベルでの相違に関しては、TSMIの17尺度全てにおいて高いESの値が認められた。つまり、競技のレベルが高くなると競技意欲が向上することが示された。 2) 競技意欲の性差に関しては、女子選手は不安(失敗不安(ES=.26),緊張性不安(ES=.34))が高く、努力へ帰属(ES=.17)する傾向にあり、男子選手は冷静な判断(ES=.38),精神的強靱さ(ES=.39),闘志(ES=.40)が優れていることが示された。さらに、性差のみられ方は競技レベルの違いに影響されることが示された。
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