研究概要 |
本研究の目的は,一定の動作パフォーマンスが,効果器系の違いによってどのように影響を受けるのか,実験的手法を用い,発達的観点から検討することである.2年計画の2年目として本年度は,昨年度の予備的実験の成果をふまえ研究を推進した.実験のための計測機器を改良し,それを用いてタッピング動作による実験を行った.当該研究は,ヒトが『任意の速さ』,外的に『規定されたテンポ』での反復動作(タッピング)を行った際,同一の時間的規制に対し,動作様式(部位)の違い(利き手,非利き手,両手同時,両手交互)によって,出力の時間的調整がどのように異なるか,成人との比較から子ども(児童:6歳〜11歳)の特性について検討したものである.本年度は,最大能力における効果器系の影響を検討に加えるため,それぞれでの反応時間の測定を加え,被検者数を増やし前年度の結果を検証した.以下に,これまでに得られた結果の概要を記す.成人では「利き手」と「非利き手」では「利き手」の方が反応時間は速いが,子どもでは「利き手」の方が速いという傾向は必ずしも顕著には示されず,素早い動作において利き側の確立がなされていない可能性が示唆された.また,急速タッピング能力発揮においては,これまで同様の結果が得られた.4動作様式のうち,「両手同時」と「両手交互」の動作速度を比べてみると,どの被検者でち「交互」が速いが,「同時」に対する「交互」のタッピング間隔時間の割合が,子どもでは大人より有意に長く,両側交互動作の左右の切り替えに要する時間が長いことが示唆された.成人では,規制されたテンポに対しては四つの動作部位とも同一に速度調整が可能であり,意識的抑制がどの部位でも同様に可能であるのに対して,低年齢児では,自己のテンポは出力部位によって変わらず,逆に抑制的調節場面において,その動作部位が影響するものと考えられた.
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