研究概要 |
本研究では前年度本課題実績として報告した「運動後の活動筋内で生じる核DNA酸化的傷害の増大に対する筋線維膜損傷の関与」について更に詳細な知見を得るため,代謝亢進の要素を除外した注射針刺入による筋線維損傷モデルによる検討を行った.実験にはwistar系雄性ラットの腓腹筋を用い,経皮上より注射針(16G)を筋腹に1回刺入し,刺入直後,1時間後,3時間後,6時間後,24時間後に被験肢と対側肢の被験筋を摘出した(NI群).また,注射針刺入後より1時間の平地走行(10m/min,0deg)を負荷し,直後に摘出したEX-NI群と,注射針刺入直後にコルヒチン(1ml/kg)を腹腔内に投与し,24時間後に摘出したCol-NI群についても被験肢と対側肢で比較を行った.摘出筋は直ちに液体窒素にて凍結し,-80℃にて保存した.核DNAの酸化的損傷は抽出したデオキシグアノシン(dG)中の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)を指標とした.その結果,NI群では非侵襲肢に比して8-OH-dG/dG値が直後に上昇し,1・3・6時間後には変化は認められず,24時間後に再び上昇した.この結果は,これまでに分かったラットのダウンヒル走行(20m/min,-17deg,1時間)実験の結果(運動終了時と24時間後に上昇,3時間後には変化せず)と同様の傾向を示した(昨年度実績報告分).よって,運動時に見られた核DNA酸化障害には筋線維膜損傷の関与が大きいことが示唆された.また,EX-NI群では運動後(刺入1時間後)に非侵襲肢に比して8-OH-dG/dGが上昇したことから運動が膜損傷部位のDNA損傷を増大させる可能性が考えられた.さらに,NI群の24時間後にみられた8-OH-dG/dGの上昇は,Col-NI群では認められなかったことから,回復24時間目以降の核DNA酸化的傷害増加には,炎症反応の関与が大きいことが考えられ,運動中或いは直後とは異なる機序であると推察された.
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