研究概要 |
本年度は,適応型テストで利用される項目反応モデルに関する理論研究と適応型テストシステムの開発を中心に行った。 ●中村・前川・菊池(1998)では,項目反応モデルの下でテスト得点分布を設足し,その分布に最適な項目を選択する方法を提案した。能力測定場面では,依然としてテスト得点が用いられていることが多く,現実には項目反応モデルを利用しているにもかかわらずテスト得点を考慮しなければならないことがある。本研究は,そのような場面での利用を想定して提案された方法である。今後,計算方法の改善や2パラメタモデルへの拡張を検討している。 ●中村(1999)では,教育心理学の測定・評価領域に関するレビューを行った。特に,テストに関する研究で利用される統計的手法に焦点をあて,手法の利用面から応用研究を紹介するとともに,統計的手法の方法論的研究も合わせて紹介し,議論を進めた。中心的に取り上げた手法は,近年,応用研究が進みつつある項目反応理論と共分散構造分析である。さらに,本研究では急速に発展してきたコンピュータと測定領域との関連についても,最新情報を交えて紹介した。 ●一般項目反応モデルに基づいた適応型テストを開発した。適応型テストにおける項目選択法として,被験者の能力パラメタと変動パラメタの事後標準偏差を同時に最小とする方法を用いた。開発されたテストシステムは,Delphi4.0のWebBrokerを利用したWebサーバ・アプリケーションであり,テスト受験者はネットワークを利用してテストシステムを利用することが可能である。今後,このシステムに受験者照合装置を加え,セキュリティ問題を解決した次世代型テストシステムを開発する予定である。
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