研究概要 |
遺跡や建築物等の大規模空間では,1地点からでは全体を見渡せないため,その環境の中に入り込み移動し探索する必要が生じる.従来のメディアではこうした表現は困難であり,自分の見たい方向を見たり,自由に空間内を探索できるようにするにはインタラクティブなメディアでなくてはならない. 本研究では,コンピュータのディスプレイ上に実写画像を用いて空間を表現するPhotoVRと呼ばれるマルチメディア技術を利用し,対話型の大規模仮想空間を構築した.しかし,複数のノードにより構成された仮想空間内を移動する場合,ノード間の情報は提示されないなどのメディアの制限があり,適切な構築手法を検討する必要がある。そのため,この表現技法を教材へ応用するための基礎研究として,学習者が対話型仮想空間を利用する時の問題点等を抽出することを本研究の目的とし,仮想空間内での空間認知過程を分析した. 実験材料として,1)メディア教育開発センターと放送大学学園の敷地と2)千葉市に所在する公園に約40個所のノードで仮想空間を構築した.実験課題は,これらの仮想空間内を地図に記されたルートに沿って進む移動課題と,材料2の公園内を自由に移動してベンチを探し,その場所を地図に記す探索課題である. 結果は,対話型仮想空間内での空間定位には個人差が大きく,材料である仮想空間の現実空間の既知・未知は影響が無かったといえる。仮想空間内でも現実場面と同様の迷子が認められた。また,課題を達成できた被験者は,常に進行方向を前方に向けて方向感覚を失わないようにすることやランドマークを自ら定めて移動する方略をとっていることがわかった。これらは今後のマルチメディア教材へ応用する際のヒューマンインタフェースの示唆となると考えられる。
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