研究概要 |
本年度の研究実績は概ね以下の通りである。 (1) 専門家からの意見聴取 アメリカの多文化教育の専門家から研究状況についての意見を聞き,これまでに収集した資料を分析する視点を得た。本研究のテーマである「イクイティ」は,日本語の「公正さ」「公正らしさ」に相当するが,正確には「equity=エクイティ」であることがまず指摘された。アメリカでは「平等(equality)」は一般に機会均等など数的概念として捉えるのに対し,「エクイティ」は「平等」への「手段(access)」の保障,すなわち質的概念として捉えることがわかった。これは昨年度に発表した論文の結論と合致するものである。 研究代表者がこれまで研究対象としてきたJames A.Banksワシントン大学教授とは面会を果たすことはできなかったが,氏の30年余にわたる理論展開を整理し,アメリカにおける「エクイティ」概念の変遷を明らかにして論文として発表した。(「研究発表・雑誌論文」の項参照) (2) 前年度に収集した資料の分析 ハワイ州の日系人に焦点を当て,文化変容,民族的アイデンティティ,第二次世界大戦下の強制収容に関する戦後補償の問題,等を扱った社会科学習キット,社会科カリキュラムの分析を行った。分析結果は11月にハワイ州リフエ市で行われた,全米日系人博物館主催のシンポジウムにおいて発表した。さらにそれを論文として発表した。(「研究発表・図書」の項参照)
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