研究概要 |
本研究の目標は,モデルの構造パラメータと状態とを同時に推定する方法について,その可能性を明らかにすることであった.これについて本年度の研究では,次のような点が新たにわかった. まず非定常スペクトル解析を目的とした次のようなベイズモデルを提案した.提案したモデルは,時変自己回帰係数を持つモデルを基本とし,また自己回帰次数も時変であるとした.自己回帰係数は,偏自己関数係数から計算する方法と,特性根で表されるパワースペクトルのピーク周波数とバンド幅とから計算する方法の2通りを試みた.これらの時変自己回帰次数および時変偏自己相関係数もしくは時変ピークパラメータを状態ベクトルとして持ち,観測モデルが状態ベクトルで規定される時変係数自己回帰モデルであるような非線形状態空間モデルで表現した. 次にモデルのパラメータ推定には,ベイズ推定に基づく方法として,モンテカルロフィルタを基本とする非線形非ガウスフィルタリングを用いた.また時変自己回帰次数の推定には,時変次数を適宜ビット列等で表現して,遺伝子アルゴリズムにおける交叉の操作を組み込んだ. 本研究テーマの昨年度の研究結果では,時変偏自己相関係数を予め計算しておき時変自己回帰次数を別途推定する方法に関して,シミュレーション実験では真の次数よりも高いものを選ぶ傾向があり,このデバイスを修正する一方向を提案した.今年度の研究では,時変偏自己相関係数もしくは時変ピークパラメータと時変自己回帰次数とを同時に推定しているが,今年度の両方の場合において,次数の推定にバイアスが生じていることがシミュレーション実験から分かった.バイアスを補正して時変自己回帰次数を推定する方法を検討するのが,今後の課題として残されている.
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