研究概要 |
1. 修正率を向上させる手法の実現:平成9年度に実現した手法によって最大で多重度10の設計誤りに対する自動修正が可能となったが,多重度が高くなるに従い,修正率が低下する問題があった。この問題を解決するため,(1)診断対象部分回路に応じた誤り追跡入力の生成,(2)評価関数に基づく部分修正法の選択,の二つの手法を考案・実現した。(1)は,診断対象とする部分回路のみを対象として誤り追跡入力を生成することで,修正の可能性がない組合せ箇所を効果的に排除する効果をもつ。さらに(2)により,外部出力値を評価する関数を用いることで,より的確な部分修正法を求めることが可能となった。 2. 追跡多重度を向上させる手法の実現:従来は一つのコーン回路(単一出力の部分回路)に4個以上の設計誤りが含まれる場合には対応不可能であった。そこで,機能仕様と一致しない外部出力を頂点とするコーン回路の共有部分回路に対象を絞り込むことで,多重度5までの設計誤りが一つのコーン回路に含まれる場合にも対応する手法を考案・実現した。 3. インクリメンタル合成部作成:考案・実現した手法に基づき,機能仕様が変更された際に,すでに合成された回路に対する可能な限り少ない修正によってその変更を満足させるインクリメンタル合成手法を考案し,ソフトウェアとして実現した。変更前の仕様に基づいて合成された回路が誤りを含むと考え,変更後の仕様を正しい機能とみなして論理診断・修正を行うことで実現する。論理診断・修正手法をその基本とすることで,最小の修正で変更を実現することが可能となった。 4. 性能評価:実験により,種々の回路に対して誤りの追跡・修正を行った。多重度5の設計誤りに対する修正率が35%から91%に改善され,また多重度10に対しても同程度の修正率が得られる効果を確認した。
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