研究概要 |
本年度は,昨年度に引続き,質問を用いた無矛盾仮説探索の一つの応用である質問による翻訳学習について研究を行なった.翻訳は異なる言語上の2項関係としてとらえることができる.そこで,本研究では,翻訳の表現系として基本形式体系(EFS)を採用した.EFSは,文字列領域上の一種の論理プログラムであり,翻訳のような2項関係だけでなくより一般的な言語間の関係を記述できる. 昨年度は,融合原理に基づいた翻訳EFSの処理系の開発を行なった.融合原理におけるもっとも基本的な処理として単一化代入の計算がある.EFSの処理系においては,文字列パタン同士の単一化を行なうため,その計算コストはかなり高いものとなる.そこで昨年度は,単一化を定数パタン部分の最左マッチングだけに限定し,実効的な速度で動作する翻訳EFSの処理系を試作した.さらに,この処理系によって単純なテキストファイル変換機能が実現できることを実験的に示した.本年度は,最左マッチングに加えて最右マッチングも行なえるように単一化機能を拡張することによって処理系の改良を行なった.この処理系では,最左マッチングと最右マッチングが混在したような単一化が実行可能なため,より柔軟なテキストファイル変換機能が実現できる. また,翻訳学習に関しては,正例からの翻訳学習可能性について考察を行なった.結果として,線形モードEFSとよばれる翻訳EFSの部分クラスに対して,正例からの学習可能性に関するいくつかの特徴付けを与えた.今後は,これらの結果を基に,テキストデータベースの書式の変換という比較的頻繁に起こるルーチンワークをいくつかの変換例や質問を通して自動的に処理するシステムの構築を目指す.
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