研究概要 |
研究を開始した当初は多値画像だけを対象としてデジタル透かしの開発を行ってきたが,平成9年度の研究過程において電子図書館の運用形態などを調査したところ,対象をより一般的なデジタル著作物全般にまで広げることの必要性が確認された.平成9年度はPDFやPostscript言語などのページ記述言語のみを対象としていたが,本年度は同手法を一般化し,汎用のプログラミング言語に対するデジタル透かし技法について研究を行った.とくにネットワークを介して流通する機会の多いJAVA言語に着目し,同言語に対する電子透かし実現のための原理や,その安全性を高めるための手法について研究を行った.今回提案した手法では,通常は実行されないようなモジュールをプログラムの一部に埋め込んでおき,透かし検証を行う特殊な環境でのみ,透かし(モジュール)の検出を可能とする.不正を行おうとするユーザは,例えばコードを改変してモジュールの位置を混乱させたり,あるいはプログラムの最適化器を用いて冗長なモジュールの除去を図る恐れがあるため,モジュールを保護するために難読化等の工作を行う.例えば条件分岐の部分などに偽装コードを埋め込み,コードの改変が行われるとプログラムが正常に動作しないような仕組みを埋め込んでおく.提案方式に基づいて実証実験を行い,同方式の有効性を確認した,また,電子透かしの安全性を形式的に検証するための手法や,電子透かしを用いたプロトコルを実現する際に必要となる個人認証法についても研究を行った.以上の研究成果をいくつかの研究会において公表した.
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