研究概要 |
本年度は,以下の2点について研究を行った. 1. 不明確なパラメータを含む線形計画問題: 目的関数の係数ベクトル間に相互関係があり,その取りうる範囲が凸多面体として表される線形計画問題の最大リグレット最小解の計算方法について研究した.まず,この問題の可能的最適端点の列挙法を提案するとともに,凸多面体を矩形で近似し,Steuerの方法で列挙するよりもかなり効率的であることを計算機実験により明らかにした.次に,Stackelberg問題の一種である最大リグレット最小化問題が,凸最大化問題に帰着できることから,外部近似法に基づく解法アルゴリズムを新たに提案した.さらに,計算機実験により,昨年度,提案した可能的最適端点の列挙による方法および分枝限定法に基づく方法と計算効率性を比較検討した.その結果,問題の規模が十分小さい場合は,可能的最適端点の列挙による方法が最も効率的となったが,問題の規模が大きい場合には,外部近似法に基づく方法が最も効率的であることが明らかになった.外部近似法による解法は,最悪達成率最適解の計算にも適用できることもわかっている. 2. 不明確なパラメータを含む2レベル線形計画問題: この問題は,従来ほとんど取り扱われていないため,問題の定式化から行った,下位問題の目的関数の係数が不明確で,その取りうる範囲がわかっている場合を取り上げた.min-max決定に基づき,取りうる係数値の中で上位の意思決定者が最も不利になる場合を最良にする解を求める問題として定式化した.制約領域が有界である場合には,上位の各決定および係数の取りうる範囲の各端点に対して下位問題の最適基底を列挙すれば線形計画問題を繰り返し解くことにより解が求められるので,解の存在性は明らかになっている.現在,種々の大域的最適化法を適用し,効率的な解法を検討している.
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