研究概要 |
従来の降雨時における斜面の崩壊・未崩壊の判別基準に関する研究の多くは、建設省による土石流の警戒・避難基準雨量設定に代表される崩壊発生の誘因である降雨に関して多く行われている。しかし、これらは降雨観測域に準じた流域単位、地域単位の基準であり一単位内のどの斜面で崩壊が発生するかまでは特定することができない。このように,今までの崩壊予測手法が降雨要因が主体であったのに対して,降雨要因に斜面要因を加味することで個別管理による斜面の崩壊可能性評価手法を提案した.さらに,解析手法として,パターン認識に優れ,非線形性が強い要因の組み合わせ問題に適したニューラルネットワークを導入することで,崩壊発生予測精度の向上を図った. 構築した判別システムではシステムから出力される各斜面ごとの崩壊確信度(V)の数値により崩壊可能性の評価が可能である.すなわち,崩壊確信度(V)が0.5以上で崩壊を示し,1.0に近いほど「崩壊」の可能性が高いことを示し,0.0に近いほど「未崩壊」の可能性が高いことを示す.その結果,過去の崩壊データに対して,堆積岩で70%,火成岩で84%もの崩壊時刻での高い判別率が得られ,1時間前では堆積岩で40%,火成岩で63%の判別(予測)率が得られた.未崩壊降雨では,堆積岩で93%,火成岩で96.5%ののり面で降雨継続中常に未崩壊と判別することが可能であった.また,降雨継続中のリアルタイムでの崩壊・未崩壊判別では雨の降り始めでは未崩壊と正しく判別し崩壊発生1〜2時間前から崩壊と判別し,崩壊発生後には崩壊確信度が低下が見られる.従って,崩壊可能性を事前に予測することが可能であり,崩壊可能性の高い期間を的確に把握する事が可能である.今後、実際の防災管理を考慮した検討が必要である.
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