研究概要 |
本研究は,高密度ヘリコン波プラズマ生成における遅波の役割を明らかにし,その物理的機構を解明することを目的とした. 実験は,直線磁場型実験装置(HPX)を用いて外部磁場B_0≦1.4kGの範囲で行なった.各種ガスを数mTorr封入した真空容器の二端にガラス管を設置し,その外側にm=0モードのヘリコン波の励起に適したダブルループアンテナを巻き付け,整合器を介して高周波(f=13.56MHz,P〓rf<5kW)を印加することによってプラズマを生成した.H_2,D_2,He,Ne,N_2,Arガスを用いてプラズマ密度n_PのB_0依存性を調べたところ,n_Pが最大となるB_0(B_0-MAX)はHe^+,Ne^+に加えて分子性ガスの場合,従来考えられていたH_2^+,D_2^+,N_2^+ではなく,それぞれH+,D+,N+イオンの質量数の0.5乗に比例して大きくなることが分かった.またその値は高密度近似を用いた低域混成波の共鳴条件を満たす磁場(BLH田D)よりもわずかに大きな値となり,このB_0-MAXと^BLH-HDの違いから共鳴条件を満たすn_Pを求めると,最大密度の約10分の1の値となった.これらの実験結果とイオンも含めた分散関係の数値計算の結果から, (1)誘導電場によって生成された低密度プラズマ(n_P<10^<11>cm^<-3>)に低域混成波に近い分散関係をもつ遅波が励起され,この遅波の波動エネルギーの吸収によってプラズマ密度がヘリコン波の励起が可能となる大きさにまで上昇する, (2)ヘリコン波の大きな波動電場によって密度はさらに増加しn_P>10^<13>cm^<-3>の高密度プラズマが生成されるとともに,遅波の励起は周辺部の密度の低い領域に制限される,というモデルを示した。
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