研究概要 |
周波数2.45GHzのマイクロ波を用いた本電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源内では共鳴電子の存在に起因してミラー磁場中心部にポテンシャルのウェル(well)が形成されている.ポテンシャルウェルは多価イオンの生成そのものには大きく寄与すると考えられるが,反面多価イオンほど軸方向への閉じ込めが増大してイオン電流として引き出し難いと考えられる.そこで多価イオンの生成効率を高める為に従来の定常的(CWモード)なマイクロ波給電に対して,時間的に変調させたマイクロ波給電(パルスモード)で,アフターグローフェーズを定常的に加味する実験を行っている.既にアルゴンガスを用いて,4価以上で時間平均した電流量においてもCWモードに比べて多価イオン電流が増大することが判明した.実験条件は動作ガス圧10^<-4>Pa台,パルス幅約10μs〜1ms,デューティーサイクル50%,入射マイクロ波電力(約0.2kW)はCWと同等もしくはそれ以下である.Ar^<6+,8+>電流の時間発展を観測したところ,マイクロ波給電が遮断された後に増大し且つピークを示した.また給電時に減少することが判明した.これはプラズマ生成にアフターグローフェーズを加味することでポテンシャルウェルが緩和して,多価イオン電流が増大したと考えられる.本年度はイオン源内部のプラズマの電子温度・密度を測定し,電子密度に顕著な差が認められなかったが,電子温度及び空間電位はCWモードに対してパルスモードでは低く,ポテンシャルウェルの緩和を示唆した.更によりパルスモードの効果を明らかにする為にキセノンガスを用いて実験を行い,9価以上の多価イオンで電流値の顕著な増大が認められた.本多価イオン源においてアルゴンガス及びキセノンガスでの実験結果を考慮すると質量/電荷の比(m/qe)約10程度以下の多価イオン生成がパルスモードで改善することが判明し,このことは形成されたポテンシャルウェルの深さに密接に関係していると考えられる.
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