航空機用雲粒サンプラーおよび航空機搭載時に必要となるサンプラーカバーを作製した。このサンプラーは前年度に試作し、良好に動作した地上用雲粒サンプラーと同一原理で設計されている。今年度は雲を対象とした航空機観測が実施されなかったため、このサンプラーを実際航空機に搭載させ、雲粒のサンプリングをおこなうテストは実施できなかった。今後の観測に柔軟に対応するために、サンプラーカバーには汎用性を持たせ、プラッドホームとなる航空機が異なっても搭載できるような形とした。 雲粒痕跡内に存在する粒子中に硫酸イオンが存在するか否かを判定するためにサンプリング面への試薬薄膜の採用を検討した。いくつかの薄膜を実験室内で試験した結果、ポリビニルアルコールに塩化バリウムを含んだ薄膜をサンプリング面に用いると硫酸イオンを含む雲粒の痕跡のみ周辺にリング状の析出が見られた。これにより、昨年度X線分析では判別きなかったと考えられる硫酸イオンの検出が可能になった。また、雲粒径と痕跡径との関係を求め、雲粒内化学成分と同時に雲粒径も測定できるようにした。 昨年度同様、地上用サンプラーを用い釜石鉱山の立坑を利用した雲実験施設でテスト観測をおこなった。立坑底部で硫酸ミストを発生させた時に坑頂部で生成する雲粒をこの複合膜を用い観測した結果、硫酸イオンを含む雲粒と土壌粒子を含む雲粒ではそれぞれの粒径分布が異なることを明らかにした。
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