研究概要 |
生態系の原状回復機構には食物連鎖を主とする生物学的循環と併せて、個々の細胞自体に積極的に自らを解体し原状回復に寄与するメカニズムが存在するという「プログラムされた自己解体モデル(大橋,中田,菊田,村上,1987)」が提唱されている。 原生動物Tetrahymenaの死滅およびそれに伴う解体について、その現象を生化学的に検討し、上記モデルの整合性についても検討した。 (1) 細胞死誘導方法の検討 培養細胞に短時間の致死的刺激を与えた後元の培養条件に戻すと、数時間で細胞が死滅しホモジネート状態にまでする現象を見いだした。刺激として高温および酸を用いたが両者ともに形態および(2)のリソソームの挙動について共通の変化を示した。この解体過程はエネルギー要求性を示す事から能動性プログラム性が示唆される。現在、細胞周期を同調化し均質性を高め細胞周期の違いについても検討を進めている。 (2) 細胞内リソソーム顆粒の挙動の検討 アクリジンオレンジ生体染色による蛍光顕微鏡観察によってリソソームなどの酸性顆粒の挙動を検討した。解体進行中の細胞の形態変化に伴い、酸性顆粒が維持、増加、あるいは細胞質全体が酸性に変化する細胞がみられ自己解体仮説を支持する結果を得た。 (3) リソソーム起源加水分解酵素量の変化の測定 自己解体現象はリソソーム起源加水分解酵素系が自らの解体に能動的に寄与していると想定される。分解酵素系の新たな合成を含む能動的な過程であることの指標として、リソソーム起源加水分解酵素の総活性の変動を検討している。 現段階の成果をまとめた論文の投稿準備中であり、またプログラムされた自己解体モデルについて人工生命の手法を用いたシミュレーションによる検証も共同研究で行い、論文投稿中。
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