研究概要 |
(1) カブトエビは土壌深さ0〜1.5cmの層に全個体数の96%を産みつけることがわかった.この水田土壌の撹拌頻度を大きくするに従って,土壌中のカブトエビの卵が水中に浮上する個体数が増加し,発生個体数も増加した.一方,静置した土壌からはカブトエビは発生しなかった.以上のことより,カブトエビの個体数を安定して発生させるためには水中に数多くの卵を浮上させ,かつ水の保持に努めることが重要であることがわかった. (2) 孵化には卵を乾燥させることが重要であるが,現地観測より冬期にビニルハウスを耕作している水田の発生率は高く,一方降雨時に水が流出する水田では発生率は低かった. (3) 雑草除去に必要なカブトエビの個体数維持するために有効な人工孵化方法を提案することができた.乾燥器内で60日間乾燥させた卵の孵化率は10%弱であり,実環境中においても孵化率は低いものと思われた.しかし,産卵直後の非乾燥卵を次亜塩素酸ナトリウム10%溶液に20分間程度浸漬させた結果,最大70%もの孵化率が得られた. (4) 実用化への課題としては,次亜塩素酸ナトリウムの処理によって孵化した幼生の成長,ならびに環境中での生残率を確かめる必要がある.また雑草防除に有効と思われるカブトエビが発生している水田においては,高い濁度が発生し,他の生物相が極めて貧弱となっていた.農薬使用を少量化させることによるリスクの低下と水田中の生物多様性の保全を熟考し,カブトエビの活用を考える必要がある.
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