アザジラクチンはインドセンダンから得られるトリテルペノイドで、強力な昆虫食物摂取阻害活性を有するが、人畜には全く無害であり残留性も低いことから、環境に優しい天然由来の農薬として極めて注目されている。本研究ではアザジラクチンの構造活性の相関関係およびその作用機構を解明するべく、効率的な合成経路の確立と全合成の検討を行った。アザジラクチンはデカリン部位とジヒドロフランアセタール部位の二つのセグメントから構成されており、両セグメントを光学活性体として合成することを計画した。 まずデカリン部位の短段階合成を検討した。マロン酸エステルを原料とし、不斉アリル化反応等を用いてトリエン化合物を誘導した。この化合物の熱的分子内Diels-Alder反応は選択的に進行し、高度に官能基化されたデカリン化合物を与えた。これによりアザジラクチンのデカリシ部位の合成法が確立された。また、三環性ジヒドロフランアセタール部位の合成をも完了した。不斉Diels-Alder反応により得られる二環性化合物を原料とし、Sml_2による還元的エーテル開裂、選択的アリル化およびアセタール化など種々の高選択的官能基を経て、三環性化合物の合成を達成した。本合成法は21工程で全収率25%とこれまでにない非常に高い効率である。 本研究によって確立された合成法はいずれも従来法より短工程かつ優れた効率性を有していると同時に、本合成により得られたセグメント化合物は全合成のための重要中間体であると位置づけられ、近い将来アザジラクチンの全合成が可能であると確信する。
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