研究概要 |
沖縄産の二枚貝イワカワハゴロモガイpinna murikataから単離されたピナトキシンはタイラギ貝食中毒の原因物質と考えられる有毒物質である。今までにない新規骨格をもち、テトロドトキシンと同等の強い毒性が確認されている。カルシウムイオンチャネル活性化作用が報告されたものの詳細な生理作用は不明である。私は海産毒の化学構造と生理活性に注目して全合成研究を開始した。ピナトキシン及びその誘導体の供給により詳細な生理作用を明らかにすると同時に特異的イオンチャネル活性化・阻害作用を有する新規有機化合物の創出を狙いとし,生理活性発現の部分構造解明を考慮にいれ,特徴的な部分構造(BCD環部・AGEF環部)を別々に合成した後、それらを連結させる計画で全合成研究を進めている。3環性スピロケタール(BCD環部)部の合成は触媒的不斉エポキシ化・ジヒドロキシル化を経て,高選択的・効率的に達成した。生理活性発現に最も重要と思われるイミン部を含むAGEF環部合成にあたって,困難と予想される4級不斉炭素を含むG環部の立体選択的な構築を目指し,2つのルート(分子内ディールス・アルダールートおよび分子内アルキル化ルート)を検討した。分子内ディールス・アルダー反応により4級不斉炭素の立体制御はできたものの,1つの不斉中心が逆となり,これを反転する必要が生じた。しかしながら,もう1つのルート分子内アルキル化反応は連続する不斉中心を完全に制御し,目的とするG環部の合成に成功した。現在,AGEF環部の合成,BCD環部とのカップリングを検討中である。
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