研究概要 |
酵素反応ではゲスト分子を認識した後、お互いのコンフォメーションを変化させながら反応が進行するのが実際である。今までの分子認識の研究では、分子による分子の見分け(静的分子認識)にだけ関心が集中し、その後の機能発現(動的分子認識)については仮説の域を出ていないのが現実である。本研究では、環境の微妙な変化を鋭敏に反映する測定手段として^<19>F-NMRを選択し、^<19>F核をプローブとしたNMR測定により、これまで^1H-NMRでは困難だった生体系での認識を含む特異的酵素反応追跡の有効な測定手段の開発とそのモデル化合物の合成を目的とした。 1.補欠分子ヘム前駆体ピロールへのフッ素置換基(F基とCF_3基)の導入とポリフィリン、ヘムへの誘導 導入するフッ素基として、F基(立体的因子)とCF_3基(電子的因子)を選択した。フッ素を含む補欠分子ヘムの合成方法として、まずフッ素基の導入をピロール階段で行い、このピロールを出発物質として、目的ヘムからの逆合成法により設計した反応経路で、ポルフィリン、ヘムへと誘導した。 (1)F基についてはBalz-Schiemann反応(光反応)を応用し、F基を含む新規ピロールEthy 3-fluoro-4,5-dimethylpyrrole-2-carboxylateを合成し目的ヘムへと誘導した。 (2)CF_3基については、既に報告したCF_3基を含むエステルを用いた改良Knorr反応を用い、新規ピロールBenzyl 3-trifluoromethyl-5-methylpyrrole-2-carboxylateを合成した。そして、現在ジピロメタンまで誘導しており、さらにポルフィリンへと合成を進めている。 2.今後の展開 F基に関してはモデル化合物の合成を完了し、現在CF_3基について合成を進めている段階である。今後それぞれの得られたモデルヘムを用い、アポミオグロビンと再構成し物性評価を行う予定である。
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