研究概要 |
申請者はシステインプロテアーゼ阻害活性をイチジクの果実組織(アメリカカリフォルニア産)にパパイン阻害活性を見いだした。前年度ではゲル濾過そしてイオン交換カラムにかけ単離精製した。本年度ではこの活性画分を高速液体クロマトグラフにかけ最終精製した後、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法飛行時間型質量分析器にかけた結果、分子量約1,100であることを明らかにした。さらに種々の実験(ポリアクリルアミドゲル電気泳動、核磁気共鳴、Lowry法など)により、このインヒビターは非蛋白性のものであることがわかった。またシステインプロテアーゼ パパインを阻害し、セリンプロテアーゼキモトリプシンは阻害するが同じクラスのトリプシンには作用しないという非常に興味深い特性を示した。将来的には、この非蛋白質性インヒビターのさらに詳しいキャラクタリゼーションを行い、その詳細な高次構造も明らかにしていく予定である。 天然有機化合物として動植物の死骸や排泄物などの腐敗によってできるフミン酸は、土壌の有機物の主成分で地球上もっとも多量に存在する有機物である(土が黒いのはこのためである)。当然これが地球環境に与える影響は非常に大きいと思われる。しかしながらフミン酸の構造はおろかその特性さえもよくわかっていない。興味深いことに、フミン酸の赤外吸収スペクトルとこのインヒビターのそれとが非常によく似たパターンを示した。 よってこのインヒビターの構造解析はフミン酸の構造解析に一役買う可能性が大いにあるし、また非蛋白質性のインヒビターでこれ程大きい分子量でしかも特異性のあるものは余り報告されていない中、この構造解析は大きな意味を持っている。
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