研究概要 |
塩酸グアニジンによる変性実験とぺプチダーゼを用いた限定分解実験から、MutS蛋白質は4つの構造ドメインからなると推定された。ゲルシフト法を用いて、これらのドメインのうち中央部に位置するドメインが2本鎖DNAと相互作用する領域であることが示された(Tachiki et al.,Nucleic Acids Res.26,4153-4159)。また、これら構造ドメインの情報を元にして3つの断片化遺伝子を作成し、それらの大量発現と精製を行った。得られた断片化蛋白質が立体構造を保っていることをCDを用いて確認後、それらの溶液中での分子量・ATP加水分解活性・DNA結合能等について検討した。その結果、中央部のドメインがMutS蛋白質の多量体形成能と2本鎖DNAへの非特異的な結合能を有していること、及び、C末端ドメインがATP加水分解活性とミスマッチ特異的DNA結合能を持つことが明らかになった。さらに、C末端ドメインの活性は単量体では現れず、2量体の時のみに現れるという興味深い性質を示した(Tachiki et al.,inpreparation)。この観察は、MutS蛋白質の機能発現には多量体形成が必須であることを示唆している。そこで、溶液中でのMutS蛋白質の会合状態をX線小角散乱を用いて測定した。その結果、MutSはアデニンヌクレオチド存在下で4量体として存在し、ヌクレオチド非存在下ではより小さな会合状態ヘシフトすることが明らかになった(Kato et al.,in preparation)。 また、蛋白質単独およびADP共存下でMutSの結晶化に成功した。 さらに、MutS蛋白質と共にミスマッチ修復に関わるUvrD,MutL蛋白質の大量発現系の構築を行い、さらに精製法の確立を行った(Kato et al.,in preparation:Shiba et al.,inpreparation)。
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