研究概要 |
プロスタサイクリン(プロスタグランシン(PG)l_2)は,アラキドン酸カスケートのうちシウロオキシゲナーゼ経路で作られるエイコサノイドで,心血管・循環器系の制御に関わる重要なオータコイドである。プロスタサイクリンは血小板凝集阻害作用および血管拡張により血管壁表面を血栓形成から防御し生体の血液循環を保つ抗動脈硬化性作用を有している。生体内では,これらのプロスタサイクリンの生理作用はプロスタサイクリンと同じくPGH_2から産生されるトロンボキサンA_2により拮抗的に抑制され,生体にとって両物質の量のバランスが循環器系の調節に重要な役割を果たすと考えられている。 ヒトプロスタサイクリン合成酵素のin vitroでの活性発現に重要な構造は、本合成酵素のヘムの第五配位子と考えられる441位がCysであることが重要なことを見い出しているが、今回、動物細胞へこれらの遺伝子を導入し比較することによって、細胞内でのプロスタサイクリン合成においても441位がCysであることが極めて重要である結果を得た。本酵素はモノオキシゲナーゼ活性を有しない例外的なP450であるが,その活性の発現にはin vitroにおいても細胞内においても441位がCysであることが重要であることが解った。さらに、活性型のヒト本酵素遺伝子をHVJ-liposome法によりラット頚動脈に導入し発現させたところ、ラット頚動脈において有意なプロスタサイクリン合成活性を示し、動脈硬化様病変の進行を抑制する結果を得た。さらにプロスタサイクリン生合成機構および生理的な役割を詳細に理解するために、現在、活性型および改変型ヒト本酵素の構造解析研究を継続して進めている。
|