昨年度構築したスクリーニング系を用いて今年度は実際にスクリーニングを開始した。スクリーニングに用いたサンプルはカビ及び放線菌由来の粗培養抽出液であり、それぞれ、1137、1188種類、合計2325種類を2つのスクリーニング系(α-factorによる増殖停止を利用した系。CRV4遺伝子とMAPキナーゼカスケードの合成致死性を利用した系)に用いた。α-factorを利用した系は1次スクリーニングからポジティブな物は得られなかった。crv4変異株を利用した物は野生株よりcrv4変異株の方により強く作用するサンプルが3種類得られた。 次にこれらのサンプルがどこに作用するかを遺伝学的手法を使って調べた。まず、crv4変異株にMAPキナーゼカスケードの構成因子を活性化させたもの(MAPKKKホモログのBCK1優性活性化型変異、MAPKホモログの多コピー型)を導入して薬剤の感受性が抑圧されるかを調べた。しかしながらいずれの場合にも薬剤感受性は抑圧されなかった。この結果は用いたサンプルの作用点がMAPKよりも下流かMAPキナーゼカスケードとは別のCRV4関連情報伝達系に起こっていることを示唆している。よって残念ながら今回のスクリーニングでは目的とする薬剤の取得には成功できなかった。今後は(1)スクリーニングのサンプル数をもっと(10倍以上)増やすこと(2)一回のスクリーニングにかけるサンプル量をもっと増やすこと(今回のサンプルの多くは抗菌活性をしめさなかったため)などによって、目的とする薬剤のスクリーニングを続けていきたいと思っている。
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