研究概要 |
光合成は生物の営む唯一の太陽エネルギー獲得二酸化炭素固定反応である.高等植物において,光合成に関与する遺伝子は,光と組織特異性によりその発現が厳密に制御されている.そこで,高等植物のモデル系として最適なシロイヌナズナを材料とし,光合成遺伝子の発現制御機構に異常をきたした変異体を系統的に単離し,解析することによって,光合成遺伝子の発現制御機構を明らかにすることを目的とした.これまでに,光合成遺伝子の発現を容易に検出するために,そのプロモーター領域をレポーター遺伝子と融合したキメラ遺伝子をシロイヌナズナに導入した.その形質転換植物を変異原処理し,通常光合成遺伝子が発現していない組織である根とカルスで,光合成遺伝子が発現するようになった変異体を選抜した. 1. 根において光合成遺伝子が発現するようになった変異体に関してマッピングをおこない,第1染色体中央部の7G6マーカー付近にマップされることがわかった.したがって,先に第4染色体上のCOP9近辺にマップされた変異体とは異なるものであることが明らかとなった. 2. これまでに得られたタイプとは異なり,かつ変異原因遺伝子のクローニングが容易な変異体を単離する目的で, (1) トウモロコシのAc/Dsトランスポゾン系を利用した,activationタギング法のためのベクターを作成し,既にレポーター遺伝子を導入したシロイヌナズナに再導入することに成功した.今後この形質転換植物を利用して,全染色体をカバーするactivationタギング個体の作出が可能となった. (2) 根培養法とactivationタギング法を組み合わせることで,高効率にカルスでの目的の変異体を選抜することが可能となり,約50,000カルスについてスクリーニングを行い,光合成遺伝子が発現するようになったと期待される変異体3候補を得ることに成功した. 今後さらに解析をすすめ,これらの原因遺伝子を明らかにする予定である.
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