研究概要 |
本研究は当初、cDNA発現ライブラリーを染色体外発現ベクターを用いて構築し、この中からES細胞の分化を誘導するクローンを機能的に選択し、その遺伝子を単離・解析することを目標としていた。このために20万個のクローンからなるライブラリーを作製し、そのスクリーニングを行ったが、この過程で極少数の分化細胞からベクターを回収する効率の悪さが問題となった。この点を克服すべく条件検討や方法の改良を試みたが、結局現在に至るまで顕著な改善は得られていない。一方、年々増加する分化関連遺伝子に関する情報の増加に基づき、作製したライブラリーからまず候補遺伝子を含むものを単離し、これらに関して個々に検討を加えた。この結果、転写因子COUP-TFとCdx2が、それらの強制発現により、ES細胞を栄養外胚葉様細胞へと分化させることを見いだした(日本発生生物学会第32回大会にて発表予定)。また、これまで用いてきた染色体外発現ベクターpHPCAGGSに改良を加え、染色体に組み込まれた形でも高発現を示す多目的発現ベクターpPyCAGIZ,pPyCAGIPを開発し、これらを用いてドミナントネガティブ型STAT3の強制発現がES細胞では分化を誘導するがEC細胞ではなんら効果を示さないこと、および、これとは逆にc-junの強制発現はEC細胞においてのみ分化を誘導することを見いだした(Niwa H.,et al,Genes&Dev.1998、および日本癌学会年会にて発表)。今後は以上の成果に基づき、ES細胞の分化機構の解析を更に進めるとともに、ライブラリースクリーニングの効率的実施のための方法の開発を行うべきと考えている。
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