研究概要 |
1) 軸索成長円錐の行動を抑制する成熟脊髄灰白質の作用について(Nagashima et al.,J.Neurobiol.,in prcss)伝導路を構成する軸索の成長が発生過程に従って減弱する現象に対して、標的領域の灰白質に存在する軸索の成長を促進する分子の減少か、或いは成長を抑制する分子の増加が、軸素伸長を調節している可能性が考えられる。生後1日齢のハムスターの大脳皮質知覚運動野の上肢領域を、生後1日齢から3週齢の頚髄から抽出した膜分画上で組織片培養し、異なる生体条件に対する皮質由来の神経突起の応答について、突起伸展の定量化および経時的ビデオ顕微鏡による動的行動解析により検討した。その結果、脊髄の成熟に従って皮質由来の神経突起の成長を抑制するようになる原因として、白質に局在し髄鞘に関連した分子のみならず、成熟灰白質にも抑制性の分子が存在し、皮質脊髄路軸索の成長円錐を誘導している可能性が示唆された。 2) 成長軸素に発現するグルタミン酸トランスポーターGLT-1について(Yamada et aI.,J.Neurosci.,1998)成熟期の星状膠細胞に発現するGLT-1について、発生過程のマウス脊髄における発現を解析した。GLT-1のmRNAは、胎仔期より成熟段階まで、脊髄外套層ないし灰白質に検出された。免疫組織化学では、胎仔期の脊髄外套層ないし白質において、横断切片で点状に、矢状断切片で線維状に、GLT-1免疫反応が認められ、電顕では成長円錐様の膨大部を形成する軸索にGLT-1免疫反応が検出され、隣接する軸素に面する軸索形質膜に限局していた。生後早期の段階でGLT-1は脊髄白質の軸索から消失し、灰白質の星状膠細胞に出現した。 従ってGLT-1は、星状膠細胞に発現する前に、一過性にニューロンに発現し伸長する軸素に局在する。GLASTは放射状グリアに局在するため、発生の過程でGLT-1とGLASTの各々のグルタミン酸トランスポーターは、ニューロンの成長軸索、或いはニューロンの細胞体の移動に沿って、細胞成分の特異的な局在分布を示す。
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