研究概要 |
中枢神経系に発現するインテグリンファミリーの機能を、解明するために既知のインテグリン分子の発現と機能を調査すると同時に、PCR法によりその他のインテグリンの同定を試みた。代表者は、これまでにβ1鎖の生後小脳のブルキンエ細胞における帯状の発現を発表したが、その発現を調節する液性因子を探索する過程で、原癌遺伝子産物であるc-fms蛋白質がβ1鎖の発現に先だって特徴的な発現様式を示すことを明かにして発表した(J.Neuroscience,'98)。したがって、c-fmsのリガンドであるマクロファージコロニー刺激因子が、β1鎖の発現を調節している可能性が考えられた。またα1鎖が、チロシン水酸化酵素陽性のドーパミンニューロンに局在すること(J.Comp.Neurol.,'98),αvβ5ヘテロダイマーとそのリガンドであるビトロネクチンが、小脳平行線維の伸長に関与することを発表した(J.Comp.Neurol.,'98)。 PCR法により脳に発現するインテグリンを調査したところβ3鎖に類似の塩基配列を確認したので、β3鎖に対する抗体を用いてマウスおよびラットの中枢神経組織を調査したところ、脳質下領域のダリア細胞と移動中の神経細胞に発現が認められた。特に移動中の神経細胞では、その移動経路に種々の細胞外基質分子の存在を確認出来たので、現在その移動に関わる分子機構を検討中である。その他のインテグリン分子の脳内発現についても、PCR法により引き続き検討中である。
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