研究概要 |
平成9年度に引き続いて,以下の結果を得た。 1. GnRHサージ機構老化過程における胎児型GADmRNAの変化 GnRHサージ機構の老化がはじまる中年期のラットを用いて胎児型GADmRNAおよびGAD67mRNA発現量のエストロジェンによる調節を視索前野と視床下部内側底部領域において検討した。両部位で,胎児型GADmRNAおよびGAD67mRNAの発現量はエストロジェン処置により変化せず,成熟ラットで見られたようなエストロジェンによる調節は認められなかった。すなわち,視索前野においてはエストロジェン処置を行っていない中年期の卵巣摘除ラットにおいて,既にGAD67mRNA発現量は増加しており,逆に胎児型GADmRNA発現量は減少していた。従って,中年期のラットに見られるLHサージ状分泌の減弱は,エストロジェンによるGABAニューロンの調節が加齢により障害され,持続的にGnRHニューロンの活動を抑制するためと想像され,申請者の仮説を支持する結果を得た。そこで,老化したラットでは,LHサージの時に実際にGnRHニューロンの活動が減弱しているのか,GABAの抑制を解除すればLHサージが起こるのか興味が持たれたので以下の実験を追加した。 2. LHサージの時にFosを発現するGnRHニューロンの数の加齢による変化 若い時期に卵巣を摘除しエストロジェンの曝露を無くすと,老化したラットでも,同年齢の実験直前に卵巣摘除したラットに比較して大きなLHサージを惹起出来ることが確認された。この時のFosを発現するGnRHニューロンの数は,それほど著明には減少していないことが示唆された。現在,例数を追加して詳細に検討している。一方,老化したラットにGABA受容体拮抗剤を投与してもLHサージは惹起出来なかった。これもエストロジェン+プロジェステロン処置のラットを用いて再検討している。また,GADmRNAを発現する細胞はエストロジェン受容体も発現していることを示す結果を得,追試している。
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