研究概要 |
本研究は、血管内皮表面類似構造を材料表面に構築することのできる新規なリン脂質ポリマーを合成及び、血液適合性の評価を目的としている。 抗血栓性を材料に付与する新たな考え方として血管内皮表面の構造に着目し、これを材料表面に構築することの有効性が認められている。リン脂質極性基を有するメタクリル酸エステルポリマー(MPCポリマー)は、血液と接触した際に、表面にリン脂質を優先的に吸着し、組織化構造を形成するために優れた血液適合性を示す。 この考え方を一歩進めて、より安定なリン脂質吸着層を形成させるための表面を、リン脂質ユニットの構造及び組成、既存の医用高分子への修飾法を詳細に検討することにより実現した。平成9年度において合成したリン脂質ポリマーを用いてポリマー表面に構築されたリン脂質自己組織化表面の解析と血液適合性の評価を行った.リン脂質分子の吸着量及びその吸脱着挙動は水晶発振子マイクロバランス法(QCM法)および原子間力顕微鏡(AFM)を用いて解析した結果,安定なリン脂質分子の組織化構造をポリマー材料表面で構築することを見出した。 リン脂質ポリマーを被覆した架橋PMMAビーズを所定量チューブに充填しカラムを作成し、ミクロスフィアカラム法にてポリマーと血液との相互作用を評価した。リン脂質組織化吸着表面を構築する表面は,血漿タンパク質の吸着および血小板の粘着・活性化を効果的に抑制することが明らかとなり,血液適合性ポリマーを創製する上で極めて有効な概念になることを確信した.
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