研究概要 |
本研究の目的は、コンピュータシミュレーションによる心室筋興奮伝導解析システムの開発である。 1 高速計算法の改良(虚血心筋への対応) 高速計算法では、効率的な格子点間引きにより高速計算を実現している。この間引き量を決定するために従来は細胞内電流量のみを用いていたが、心筋細胞の早期応答に対して充分な対応が出来なかった。そこで本年度は、間引き量決定因子を再検討し、早期応答時の再分極相の計算精度が飛躍的に向上した。以上は2次元モデルに対する計算法だが、3次元モデルへの対応に関しては、間引きの方法、空間分割の各軸(x,y,z)の優先度等について現在検討中であり、この完成が今後の課題である。 2 心臓異常電気活動のシミュレーション解析による評価 瀕脈・細動の原因として最近注目されている渦巻波のシミュレーションを行い、従来からの差分法と改良された高速計算法を比較して評価した。crossfield stimulation法により渦巻波を発生させる時の刺激時間間隔を徐々に変えた場合、従来法では、3態、すなわち、渦巻波が発生しない、2回の渦巻波、1回の渦巻波が発生する状態が順に表れた。高速計算法でもこれを完全に再現することが出来たが、間引き量を増やす設定で行うと、中間状態(渦巻波2回)の再現が不完全となった。さらなる精度の改善が課題である。 3 昨年度研究との関連と今後の方針 昨年度は、2次元領域中に複雑な虚血領域の配置を実現した。本年度の成果と合わせて、様々な不整脈解析に高速計算を利用出来る事が示された。これらの成果のさらなる向上と3次元対応が、今後の方針である。
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