本研究では、指先に装着可能な薄型センサを用いて実際に点字に触れながら点字を読み取るシステムの開発を目的としている。今年度は、実用化に向けたセンサの試作と点字検出のための信号処理について検討を行った。それらから得られた成果の概要は以下のとおりである。 1. センサの実用モデルを試作し、本来の使用状況を踏まえて評価を行った。試作センサでは検出精度を上げる目的で多数のセンサセルを用いたため、指への装着や指の移動等で問題が生じ、利用者への制約を低減する方式への改善が必要となった。また、センサを装着した状態での利用者の点字認識の可能性について検討したところ、多少の慣れが必要であるが、点字を十分認識できることが分かった。しかしながら、紙点字を読んだ場合の点字自身への影響が課題となった。 2. 本センサの利用を想定した指の動きについて被験者を用いた動作解析を行い、指移動の直線性、速度変動及び指の傾き変化等を調べた。その結果より、本システムで許容できる範囲を設定して点字検出アルゴリズムの改善を行った。 3. 点字検出の精度向上のために、ソフトウェア上での信号処理について検討した。特に点字検出アルゴリズムとして、従来の信号振幅に基づいた検出方法に加え、信号処理による波形検出を合わせて利用することで点字検出と位置推定の精度向上が図られた。
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