研究概要 |
(緒言)巨大細胞網様核吻側部(GCo)へのHRP注入によって逆行性に標識されたニューロンは傍巨大細胞網様核背側部(dPGC)、外側小細胞性網様体背側部および中脳網様体(MRF)に見出された。このことは、これらの領域のニューロンがそれぞれGCoに直接投射している可能性を示している。そこで今回、中脳網様体ニューロンへの入出力様式を解析した。 (方法)実験にはクプロマジンよびケタラールで麻酔した400gから500gのモルモットを用いた。巨大細胞網様核吻側部、中脳網様体および視床下部の刺激と記録にはタングステン微小電極を用い、終了後、陰極電流により標識し、ニッスル染色によりその部位を確認した。HRPは刺激によって同定した部位に電気泳動的に注入し、逆行性に標識されたニューロンの局在を検索した。これには、内芯がタングステン電極、外筒が10%HRPを充填したガラス電極からなる同芯電極を用い、刺激時には内芯電極を外筒電極の先端から約200mm突出させ、注入時には内芯電極を外筒電極の先端から充分に引き込め、1Hz、200ms、100?A、30分間の陽極電流を通電した。 (結果および考察)1)連続微小電流刺激(100ms,100mA,30Hz)によって左右の前顎二腹筋前腹にリズミカルな電場電位(FP)の振幅の変動が誘発される部位が赤核背側部のMRFに存在した(中脳咀嚼野:MMA)。2)MMAおよび大脳皮質咀嚼野(CMA)のしげきはそれぞれの刺激によって誘発される顎二腹筋のEMGに相互に促通効果を及ぼした。3)MMAに注入されたHRPによって逆行性に標識されたニューロンが不確帯(Zi)および視床下部外側野(LHA)に見出された。4)MMA刺激によってHMAおよびGCoにそれぞれ、逆行性および順行性のFPが誘発された。5)LHAの連続微小電流刺激によって顎二腹筋にリズミカルなEMGの変化を引き起こした。以上の結果から、MMAに存在するニューロンは、LHAからの直接投射を受けGCoに直接投射し、この経路が摂食調節に関与している可能性を示唆している。
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