研究概要 |
初年度はバクテリオロドプシン(bR),ハロロドプシン(hR)を含む膜画分をコンデンサーフィルム用薄膜に吸着させて,光照射による電流電圧の変化を高速度で検出する系を構築した.二年度は,bR及びその変異体,二種類の高度好塩菌由来のhRについてpHおよび塩素イオン濃度のイオンポンプによる光駆動性電流に及ぼす影響を検討した。その結果bRのプロトン輸送速度のpH依存性は、輸送経路の出入り口のプロトンに対する親和性を反映するらしいことがわかった。hRでも塩素イオン輸送速度の塩素濃度依存性から同様の結論が得られ、イオンの移動様式がマルチイオンチャンネルと同様に表されることが示された。さらにレーザー光を励起光として用い、single turnover中の蛋白内の電荷移動をbR及びその変異体,二種類の高度好塩菌由来のhRについて測定した。その結果bRがμsec及びmsecのオーダーの時間領域で顕著な電荷移動を起こすのに対して、hRではmsecとsub-msecのオーダーで電荷移動を示すことがわかった。この結果を分光測定による光サイクルと比較することにより、hRではN中間体の生成と崩壊の時に電荷移動が起こる可能性が高いと結論できた。 また,初年度にはbRによるプロトン輸送特性を考慮したモデル研究を行った.このモデルではbRにならい3ケ所のイオン結合部位を持つマルチイオンチャネルを考え,そのイオンに対する親和性が変化すると能動輸送が行えることを示した.さらに輸送を起こすためには親和性の異なった状熊の分布が非平衡にならなければならないことを明確にして,ポンプとチャネルの共通性と差異を提起した.二年度の実験結果もこのモデルとよく一致し、イオン輸送の一般的な機構として「エネルギー化と脱エネルギー化に伴って輸送イオンに対する親和性が変化するマルチイオンチャンネルを想定する」という考え方を支持する.
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