研究概要 |
目的)ミトコンドリアDNAが正しく複製されることは、ミトコンドリア遺伝子の遺伝情報の維持に必須である。しかしミトコンドリアDNA複製を定量的に測定する良い系がなく、そのin vivoでの解析は困難であった。ミトコンドリアDNAの酸化的障害および自然突然変異のミトコンドリア遺伝子の遺伝情報の維持に及ぼす影響を解析するため、ミトコンドリアDNAの複製を測定する系を新たに作製した。その方法を用いてミトコンドリアDNA複製開始点を1塩基の解像度で決定することに成功した。(結果および考察)複製途中の新生鎖はその5'端が自由端になっていることを利用し、Ligation Mrdiated Polymerase Chain Reaction(LMPCR)法を用いて、新生鎖のみを増幅した。真の複製鎖と放棄された複製鎖を区別することが必要であるが、今まではその区別が非常に困難であり、さらに、複製開始点が多数であることから、複製を正しく定量することが不可能であった。LMPCR法で、複製停止領域の両側にプライマーを設定することで、真の複製鎖と放棄された複製鎖の新生鎖を独立して増幅することに成功した。増幅新生鎖をシークエンスゲルで解析し、その5'端の位置を正確に決定した。また同時に、新生鎖の量を定量した。真の複製鎖と放棄された複製鎖の新生鎖の5'端の位置が完全に一致することから、複製の停止現象がその複製開始点の依存しないことを明らかにした(JBC,272,15275)。また、この測定系を用いることで、1-methyl-4-phenylpyridinium ion(MPP+)がミトコンドリアDNA複製を選択的に阻害することを見い出した(JBC,272,9605)。また8-oxoguanine認識グリコシダーゼであるMutMおよびMutYで切断後、切断されたDNA鎖を特異的にLMPCRで増幅することで、酸化障害部位を遺伝子特異的に1塩基の解像度で同定することの成功した(論文作製中)。
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