研究概要 |
ファジィ系列範ちゅう法に基づく心理的印象の測定システムを整備した。具体的には,カテゴリー化した7つの印象F_i(i=1:非常に静か,i=2かなり静か:,i=3:やや静か,i=4:どちらでもない,i=5:やや騒々しい,i=6:かなり騒々しい,i=7:非常に騒々しい)を割り当てた押しボタン方式により,呈示音に対する印象を入力するシステムである。一方,入力(L)は,"静かさを基準として騒々しい"の論理値μT(L)が,"非常に","かなり"などの言語ヘッジ(τi(s)(i=1,...,7)により真理値限定τi(μT(L))と評定されるモデルを設定し,その有効性を次の心理実験により確認した。1)帰属度関数(論理値関数)μT(L)は,Lを台とすることから変動域による文脈効果を受ける,2)"非常に"などは,日常よく利用する程度表現語であり殆ど文脈効果が生じない。従って,μT(L)をよく利用されるS型,τi(L)を三角型の帰属度関数で与えれば,大略的にも心理量を定量化可能である。このような試みとして時系列応答モデルを構成した。適当な過去の時点から直前までの入力Lとその出力FiのデータからμT(L)のパラメータを推定する。この上で新たな入力に対する出力を,ファジィ推論法を利用して予測するモデルである。このモデルは,予測だけでなくμT(L)=1,0.5,0となるデシベル値L1,L0.5,L0を推定して,個人の判断基準や例えば,呈示音の変動域の変更に現れる文脈効果を明瞭に捉えることが可能である。これは従来の系列範ちゅう法では先ず困難であろう。更に,"非常に騒々しい"等の帰属度関数そのももを推定することを考察した。時系列モデルでは,μT(L)を推定することに重点を置き,τi(s)は単純な三角型で与えたが,本研究は特殊な場合で三角型を含む台形型モデルを与え,構成パラメータを尤度法に習って推定する手法を提案した。この結果,人間の判断基準のあいまいさと,計測にまつわる誤差(確率的不確実さ)をある程度分離して判断のバラツキを眺めることが可能となった。
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