研究概要 |
蔓脚類フジツボ亜目クロフジツボ類Tetraclita属全現存種11種のうち9種T. japonica^*, T. formasana^*, T. Squamosa^*, T. rufotincta^*, T. serrata^* (^*西太平洋〜インド洋), T. rubescens^+ , T. confinis^+ , T. stalactifera^+ , T. panamensis^+ (^+北米東西岸〕をmtDNA のCOI(852塩基)および16SrRNA(470塩基)の塩基配列に基づき系統を解析した。COI(転換)の系統は(1)formosana^*とjaponica^*が最も近縁である,(2)rufotincta^*とrubescens^+が次に近縁で1つのcladeをなす,(3)パナマ地峡で分断されたstalactifera^+, confinis^+, panamensis^+が近縁である,(4)squamosa^*は北米^+の起源となり,rubescens^+はインド〜西太平洋^*の起源となり,太平洋を挟んで逆向きに分散したことを示す。 しかし塩基置換が飽和(特に(4))に達し,近縁種間を除いて系統の信頼性は低い。 信頼できる系統は16SrRNAの系統で,(5)(1)に加えてsquamosa^*とrufotincta^*が1つのcladeをなす,(6)(3)に加えてrubescens^+が1つのcladeをなす,(7)インド〜西太平洋の分類群および北米の分類群が別々のcladeをなし,系統が地理的分布と一致する。詳細にはNJ法はrufotincta^*が最も原始的で,インド〜西太平洋集団と北米集団とに分化した後,前者はsquamosa,serrata, japonica / formosanaの順に分岐した。後者はrubescens, stalactifera, panamensis / confinisの順に分岐した。MP法ではsquamosaとserrataの分岐順序が逆になった。分子進化速度はパナマ地峡両岸のstalactiferaとconfinis / panamensisから求め,COIでは1.46〜1.87%/Myとなり,エビAlphenusの姉妹種1.4%/My (Knowltonら1998)とほぼ一致した。これに基づくとpanamensisとconfinisの分岐年代は2.8〜3.6Ma,japanicaとformosanaは0.38〜0.49Maと推定された。16SrRNAでは進化速度は0.47〜0.61%/Myとなり,分岐年代はserrataとjaponica / formosanaが6.3〜8.1Ma,最も遠縁なconfinisとjaponica / formosanaが8.2〜10.6Maとなる。 Tetraclitidae科内の系統をAustrobalanus imparater, Tetraclitella multicostata, Newmanella radiata, Epopella plicatus, Tesseropora rosea, Tetraclita squamosaから求めた。COIでは多重置換の飽和が見られ,近縁属間以外解析は難しい。16SrRNAではNJ,MP法は同じ系統樹になり,最も原始的なAustrobalanusに続いてTetraclita, Tetraclitella, Newmanella, Epopella, Tesseroporaの順に分化した。
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