研究概要 |
東アジアに分布するカヤツリグサ科やイネ科草本を加害するヨコバイ亜科ヨシヨコバイ族の種と属について生物地理的区分と多様性の関係について研究を行った。これまでの分類体系では,同亜科ヨコバイ族との近縁性が重視されていたが,研究代表者は,生物地理および寄主植物の範囲に関する整合性の観点から疑問を抱いていた。そこで,前胸背側方隆起線や雄腹部第10節の構造など64形質を,本研究費で導入した実態双眼顕微鏡等を使用して観察を行った。また,ヨシヨコバイ族の形質状態を正確に把握するために,東アジアに分布するヨコバイ亜科のヨコバイ族を含む12族を外群として使用した。さらに,ヨコバイ亜科の外群として近縁と考えられている。6亜科も外群として比較を行った。 系統分類学的な結論としては,従来のヨシヨコバイ族は側系統群であり,Doraturiを含めた広義のヨシヨコバイ族を,頭部vertex,前胸背側方隆起線,前翅outer subapical cellの状態で定義した。また,広義のヨシヨコバイ族はヨコバイ族と姉妹群であり,これらを併せたcl adeは前翅c-scr,m2-cual cross vein,雄交尾器connective stem,branchesの状態で定義できることが明らかになった。このことにより,ヨシヨコバイ族はヨコバイ族と最も近縁ではなく,Dorat urini族と近縁であることが明かとなった。 生物地学的には,ヨシヨコバイ族は主に旧北区から全北区に限られているが,これは,汎世界的に分布するヨコバイ族の中で,全北区に分布していた一部のヨコバイが分化して,ヨシヨコバイ族が派生したことに由来していると考えられた。また,日本を含めた東アジアで種分化したグループを認識することができた。
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