研究概要 |
1. 国内外の文献探索やこれまでに代表者によって集められたデータをもとに,ヤドリバエの寄主選好性と従来の分類体系との対比を行い,ヤドリバエの寄生生活への適応の進化について,第3回アジア・太平洋昆虫会議(1997年,台湾・台中)で発表した.この課題については室内実験を含め現在継続中で,ヤドリバエの寄主選好性に基づいた体系では,従来の形態形質の基づく分類体系とは異なる系統群取り扱う必要性が予想されている. 2. 長い毛をもつ鱗翅類幼虫に選択的に寄生するCarcelia属と,メイガなど毛の少ない幼虫に寄生し,それに近縁と考えられているSenometopia属などの一群について,幼虫の卵や形態,寄主選好性,雌成虫の腹部末端節の構造などを検討し,これらのグループの系統関係と進化について考察を行った.その結果の一部は第4回国際双翅目学会議(1998年,イギリス・オックスフォード)で発表した.従来その分類的な位置が不明であった1種は,卵や雌成虫の内部および外部生殖器の形態が非常に特異で,どのような寄生方法をとってるのか今後の研究課題として残されている. 3. 国内外の文献と代表者のもとに集積された記録をもとに,日本産ヤドリバエの寄生記録を作成し,日本双翅学会会誌"Makunagi/Acta Dipterologica"に発表した.この研究の結果日本産ヤドリバエ約180種が,鱗翅目約330種,鞘翅目約23種,半翅目および膜翅目30種,直翅目9種,カマキリ目2種,革翅目およびナナフシ目各1種を寄主としていることが判明した.
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